現行の動物愛護法では、生きた動物を扱う業を行うペットショップや動物園などは第一種動物取扱業ですが、例外規定により、畜産関係業と実験動物関係業は対象外になっています。また対象動物種は、哺乳類、鳥類、爬虫類に限られています。
これを、「生きた脊椎動物を扱う業はすべて動物取扱業にする」とする改正を行い、両生類や魚類を含めた実験動物を扱う動物実験施設、実験動物販売業も自治体に登録するようにします。
私たちがこの改正を求める理由は…
生きた脊椎動物を扱う業は、すべて平等に「動物取扱業」にするべきである
- 動物実験施設、実験動物販売業なども適正飼養を求める対象である。一部の業種を登録対象から除外する根拠が明確でない。
- 登録を義務付けられているペットショップや動物園など、その他の動物取扱業者との間に不公平が生じている。
- 実験動物の飼養場所や動物種、数を自治体が把握できなければ、災害時に脱走した場合など、対応できない。
- 実験動物の不適切な取扱いが判明した場合に、それを是正させる監督機関がどこであるか明確な定めがない。
- WOAH(世界動物保健機関)の動物福祉規約7.8章「研究及び教育における動物の使用」においては、加盟国に動物福祉の監督枠組み(下図)の構築を求めている。
- 日本政府は、ウェルフェアに関する章の遵守は義務ではないとして業界の自主規制にゆだねてきたが、 世界的に動物福祉の潮流が強まる中で、WOAHの規約も守らず科学技術立国をうたうことが許されるとは思えない。
動物取扱業の登録に求めること
動物取扱業の対象になった場合、行政に登録する事項は現行の第一種動物取扱業の登録事項とほぼ変わらない内容を想定しています。
現行の「第一種動物取扱業」で登録が求められる主な事項 ※( )内は現行の運用。
- 主として取り扱う動物の種類と頭数(最大飼育可能頭数(飼育の上限)であり、実際の飼育数ではない)
- 動物取扱責任者の氏名・資格(責任者には要件が定められているが、獣医師であればそれだけで登録できる)
- 飼養施設の所在地
- 飼養施設の構造及び規模(動物取扱業の業務に用いる範囲のみが対象である)
- 業務の内容及び実施の方法(業務内容の簡単な概要や、繁殖があるかなど)
上記のように個別の動物実験の内容までは登録させるものではありません。
前々回改正時には、「実験施設の所在地が明らかになると抗議運動の対象になる」という動物実験業界からの意見がありました。しかし、大学、大手企業等の研究施設はウェブサイトにも所在地が書かれており、特段隠されている情報、隠すべき情報ではありません。上記程度の情報を登録できないという主張は通用しません。
現在の自治体の取り組み
国の動物愛護管理基本指針に即して都道府県が定める「動物愛護管理推進計画」では全ての都道府県で実験動物の取扱い・動物実験の3R の原則の普及などに触れている。
すでに自治体によっては独自の方法で取り組んでいるところもあり、静岡県では「動物愛護管理推進計画」にのっとり、把握できた動物実験施設42施設中に対して自主的に年1回の立ち入り調査をしています。それによって、多くの施設で獣医師がおらず、またケージサイズは国際基準以下であることが明らかになっています。
また、神奈川県では、把握できている実験動物を飼養しているもしくは飼養が想定される26施設に対して、「実験動物の飼養保管基準」を毎年、通知しています。
このように自治体は自ら情報を収集して施設の場所や規模等を把握するよう努めていますが、これには限界があります。登録を義務付ければ把握が容易になります。
飼養許可が必要なニホンザルなど特定動物を飼養する実験施設に対しては、従前から自治体による立入が行われており、施設側もそれを受け入れていることもあり、この改正も極端なものではないと考えます。
ちなみに、全国で唯一、兵庫県では1993年から条例において動物実験施設の届け出が義務付けられ、2021年7月時点で67施設が届出されていますが、施設が抗議運動の対象になり攻撃を受けたなどの問題は起きていません。
これは神戸市内にある動物実験施設で、雑居ビルにありました。ここの存在がわかったのも、兵庫県の届け出制があったからです。
現在の法体系では、実験動物の不適切な取扱いが判明した場合に、それを是正させる監督機関がどこであるか明確な定めがありません。
施設の登録や査察制度のある諸外国から、日本はかなり遅れをとってしまっている状況です。そういったことからも、動物実験施設、実験動物販売業を「動物取扱業」に含める改正は必要です。
なお、前回改正時の附則には、「科学上の利用に供する動物を取り扱う者等を動物取扱業者に追加すること」等について在り方を検討し、必要な場合には措置を講じるようにと盛り込まれています。つまり、今回の改正で優先的に検討すべき点です。
附則
(検討)
第八条 国は、動物を取り扱う学校、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する動物を取り扱う者等による動物の飼養又は保管の状況を勘案し、これらの者を動物取扱業者(第一条による改正後の法第十条第一項に規定する第一種動物取扱業者及び第一条による改正後の法第二十四条の二に規定する第二種動物取扱業者をいう。第三項において同じ。)に追加することその他これらの者による適正な動物の飼養又は保管のための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
畜産動物・実験動物も守れる法改正を求めます
この法改正の決定権を握るのは国会議員です。国会議員は市民の声、数で動きます。
私達は皆さんの思いの詰まった署名をできるだけ多くの国会議員に届けます。
どうか力を貸してください。
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